「スズメバチの巣は隠れている」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』10月号

2020年10月1日

暑い夏が終わり、涼しい秋がやってきました。過ごしやすい季節だからこそ、森歩きやキャンプがしたくなりますよね。
当校周辺の森には、お客様が自由に歩ける散策路や遊ぶための仕掛け、キャンプが楽しめる野営場など、楽しみが詰まった場所がいくつもあります。
ぜひ、沢山の笑顔で賑わえばいいなと思っています。

その為に、私たちは定期的に森の管理を行なっています。
倒木の除去や草刈りなど人間がすごしやすい環境にするには持続的な整備が必要です。
しかし、残念ながらこの時期の整備では毎年のように、ある事故が起こってしまいます。
それはスズメバチによる刺傷事故です。

秋はスズメバチにとって子育ての時期。大きくなった巣の中で幼虫を育てる為、働き蜂たちは活発に活動しています。
危険な昆虫ではあるものの、こちらから攻撃しなければ刺してくることはありません。
飛んでいるものには近寄らず、触らなければ安全に付き合うことができます。
しかし、一番の問題は、気が付かずに巣を攻撃してしまった時です。
スズメバチにとって巣は家。私達人間も家を壊されたら怒りますよね。
草木が生い茂る不明瞭な場所を移動している時は十分な注意が必要です。

巣はどのような場所にあるのでしょうか。それは種類によって様々。
木の枝や家の屋根など高い場所に作るものもいれば、写真のように地面に近い場所に作り、隠れているものもいます。
これは今年の9月に発見されたモンスズメバチの巣です。地面に落ちて腐った木の隙間にありました。
草刈り中に気が付く事が出来ず、職員が手を刺されてしまいました。
幸いにも刺されたところが腫れる程度ですみましたが、場合によっては大事故になっていたかもしれません。

それではどうやって、事故を未然に防ぐ事が出来たのでしょうか。
羽音が聞こえたら近づかない?事前に作業箇所をチェックする?
様々な方法が考えられますが、一番は「この森はスズメバチが生活する場所である」ということを私たちが心得え、
「おじゃまします」という気持ちを持つことだと思います。
いつどこで出会うかわからないことを意識し、行動一つ一つを丁寧に、慎重に。
もしみなさんも、森で活動する予定があれば、この気持ちを大切にすることで動植物との上手い付き合いができ、安全にすごすことができると思います。


<インタープリタープロフィール>

工藤 伸也(くどう しんや)プロフィール
青森県出身。大学在籍中ツリーハウスをテーマに活動。卒業後、トヨタ白川郷自然學校へ。2017年4月よりインタープリターとして活動開始し現在に至る。主に夏の子供キャンプや自然体験プログラムの企画運営を担当。白川郷に家を借り、田舎暮らしライフを満喫中。

無断転載禁止 執筆者の許可を得て転載しているものです。


トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』バックナンバー

「急な天候の変化にご用心」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』8月号
「熱中症」 トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』6月号
「夕暮れ時はご用心」 トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』4月号

「雪上ランチのすゝめ」トヨタ白川郷自然學校『インタープリター通信』12月号より
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